PROJECTS

YO-KOU

―― iOLED® x 輪島塗 ―― 

伝統工芸と最新のテクノロジーを掛け合わせるプロジェクトの第一弾として、光る漆塗りの器〈Yo-kou〉を制作しました。「夜空に浮かぶ月の光が、盃の中に映えるようなイメージ」をコンセプトに、大阪市に本社を置く化学品製造企業の日本触媒と、輪島市の漆器工房・輪島キリモトが共同で制作に着手。日本触媒が開発した紙よりも薄い0.07ミリの有機EL『iOLEDフィルム光源』を使い、度重なる試行錯誤を経たのち、漆塗りを施した器の底面にフィルムを固着させることに成功しました。両者に共通する“薄さを極める”という匠の精神が見事に結実し、現代におけるものづくりの新たな価値を提案する唯一無二の作品となっております。

余光――日が暮れてもなお残っている光

転じて、先人の為した仕事がのちに与える影響、おかげ

【 制作者のコメント 】


「異なる分野での最先端同士の共同研究だが、この組み合わせはなかなかお目に掛かれないのではないか。この成果から何かを感じて、次の一手を創造していく……。将来の人に能動的に考えられる何かを、機会を与えることがテクノロジー、サイエンスの役目」

―― 日本触媒/主席研究員 森井克行


「日常で使う器との初めての掛け合わせ。iOLEDが追求してきた薄さ、柔らかさ、技術を使って、実際にこういうプロダクトが生み出せるんだよ、というのを世の中に認識してもらえたらと思う」

―― 日本触媒/アシスタントシニアリサーチャー 呉屋剛


iOLEDに漆をどうやって馴染ませるかで苦心し、試行錯誤を繰り返した。フィルムにじかに漆を塗っても固着しないことがわかり、辿り着いたのは螺鈿。漆と螺鈿は、昔からある取り合わせ。そこに最先端の技術が加わった。完成品を見たときは、我ながら驚いた。光らせる器ってのは、今まで想像すらしなかったからね」

―― 中島甚松屋蒔絵店三代目 中島和彦


「漆の世界もミクロンの世界。100工程以上もある塗りの工程では、一層、一層をできる限り薄く塗り、それを何層にも塗り重ねていく。塗りの繊細さとiOLEDの究極の薄さには似たものを感じる」

―― 輪島キリモト桐本晃平

【 Profile 】

①株式会社日本触媒/NIPPON SHOKUBAI Co.,Ltd.

1941年の創業以来、自社開発の触媒技術を主軸に事業を展開。酸化エチレンやアクリル酸、自動車用・工業用触媒などを世に送り出し、現在では紙おむつに使われる高吸水性樹脂のシェアにおいて世界第一位を誇る業界屈指の化学品製造メーカー

②輪島キリモト/WAJIMA KIRIMOTO

石川県輪島市で200年以上、輪島塗の製造や販売に携わる。現在、代表を務めるのは七代目・桐本泰一。木地屋を生業にしながら木工製品や漆の器、小物、家具、建築内装材に至るまで幅広く製作。平成16年より日本橋三越本店にも店舗を構える

【 完成までの経緯 】

そもそもの発端は、輪島キリモトからの「漆を塗った器のなかに月の光が浮かぶような、そんな作品を作れないか」という提案でした。後日、この話を日本触媒に持ち込んだところ、「わが社の有機ELを使えば実現できるのでは」との回答を頂き、共同での開発がスタート。日本触媒が開発したiOLEDフィルム光源は極めて薄く、柔軟性に優れ、さまざまな曲面に沿うという特徴があります。器の土台となる薄く刳り抜いた木地の底面に、いかにしてこの有機ELフィルムを固着させるのか……。試行錯誤の末、この難題を克服したのは螺鈿(らでん)と呼ばれる日本の伝統的な技術でした。螺鈿とは、貝殻の内側にある真珠層と呼ばれる虹色に光沢する部分を薄く切り出し、漆器などの表面にはめこんで装飾とするものです。ここで使われる、薄く切り出した板状の光沢素材とフィルムを密着させて一体化することで、器にはめ込むことができました。その後、仕上げとしてその表面に漆を一度塗り、〈Yo-kou〉は完成しました。漆を薄く何度も塗り重ねることで奥行きのある艶感と強度を獲得する輪島塗では、螺鈿で使われる貝殻も薄くなければなりません。厚さ0.07ミリという世界最高クラスの薄さをもつiOLEDフィルム光源でなければ、この螺鈿との一体化は実現しなかったと言えるでしょう。

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